10日(月)は、California State Sperior Court(カリフォルニア州地方裁判所)のFamily Law Division(家族法部)で法廷傍聴。裁判官の厚意で監護をめぐる15件ほどのケースの法廷傍聴をさせていただきました。私は、以前、Minneapolisでも家族法に関する事件を傍聴しましたが、ある程度時間をかけて1ケースだけを処理していましたが、こちらは午前10時から正午までに、次から次へとケースを処理しており、慌ただしくも活気があるように感じました。
事の性質上、ケースの詳述は避けますが、子どもの監護に関して専門家意見を待っているケース、当事者間で事実上の合意が成立し、それをcourt order(決定)にするために日程調整をしているケース、裁判官が弁護士のいない当事者に対し、弁護士に依頼した方がよいと勧めているケース、養育費を払っていないケースで、裁判官が本人に宣誓させた上で事情を話させたケース、母親が虐待したケースで、supervised visitation(監視付きの面会交流)のための立会人について議論していたケース、年長児童と父との交流がうまくいっていないケース、妻が子を連れて家を出たケースで、妻側の代理人がDVを訴えているのに対し、裁判官が証拠を提出するまでは暫定的に父と面会交流させる旨を決定したケース、専門家意見に基づいて面会交流の頻度を議論していたケースなどがありました。
判事は、短い休憩時間にも丁寧に私たちの質問に答えてくださいました。離婚に至る流れはケースによってさまざまですが、基本的には別居の後、どちらかの親が離婚と、暫定的な監護に関する取り決めを求めるようです。裁判所は、legal custody(法的監護)とphysical custody(身上監護)、養育費や面会交流など、かなり細かく決めます。その後、離婚そのものについてhearing(審問)を開き、事実関係について争いがあればtrial(証人尋問)も行います。そして、最終的に離婚とその後の監護について決めます。ただ、子どもがいる離婚では、多くは共同親権になる関係上、離婚後も紛争に至るケースも少なくなく、従って監護に関する紛争は、別居から離婚に至る間に限られないとのことでした。
午後は、裁判所の隣の建物にあるChild Protective Services(児童相談所)の訪問と、Pacific UniversityのProf. Myers(マイヤー教授)の訪問でした。
CPSでは、通告があるとSocial Worker(児童福祉司)が家庭訪問をします(緊急なケースは直ちに、そうでもないケースは10日以内に)。多くのケースはneglect(監護の怠り)で、親や、10歳以上なら子どもも入れてTeam Dicision Making(援助方針会議)を実施します。会議は通常1回で、CPSが関わる必要すら認められないときはdismissal(却下)、CPSが関わる必要があるが深刻でないときはinformal supervision、深刻であり親権の停止等の必要があるときは裁判を、それぞれ行うようです。基本は、なるべく家族を壊さないように、外部のNGOなどが提供するプログラムを勧めるなど、informalな関わりを優先しますが、親が非協力的な場合などは裁判にするそうです。
裁判の流れは、子どもを保護した後、48時間以内にdetention hearingが実施され、その後10日以内にjurisdiction hearingが実施されます。事実関係に争いがあればtrialに移行することもあります。虐待がはっきりすると、原則として6か月ごとにCPSのSWが報告書を提出し、それと親の主張に基づいて裁判所が評価をします。最終的に18か月経過してもなおreunification(再統合)ができなければ、親子関係を終了させた上で子どもは養子に出すか、養子縁組が難しいようであればguardian ad litem(後見人)が選任されることになります。なお、子どもが3歳未満の場合は、18か月も待たず、6か月で養子に出すこともあるそうです。再統合に至るのは、ざっくり25%だそうです。
児童相談所が関与している間の親子の面会交流は、裁判所が決めるようでした。もちろん子どもの最善の利益の点から認めない場合もあるようですが、認める場合も、supervised visitationのほか、observed visitationというものもあり、前者は会話内容もすべて監視しますが、後者は離れたところから様子をうかがうだけで、何を話しているかは監視しないそうです。児童相談所の施設内で面会交流する場合もありますが、マクドナルドなどで実施する場合もあるそうです。
Prof. MyersとのmeetingはPacific Universityのキャンパス内で行われました。教授は基本的に児童虐待における証明を専門としておられますが、ハーグ条約に関しては2件、LBP(残された親)の代理人をした経験があるとのことでした。いずれも無償でやってあげたそうですが、trial(証人尋問)も行うなど、とても時間がかかったようで、うち1件は300時間くらいかかったとのことでした。
虐待等に関しては、教授は、「米国は刑事司法は比較的機能している。児童相談所も悪くはない。しかし、家庭裁判所は調査機能がないため問題が大きい。多くの母親たちは、虐待等の問題があっても、児童相談所や警察を頼るより、まず家庭裁判所に来てします。しかし、その立証ができず、かえって子どもを取り上げられてしまうのだ。家庭裁判所には最後に訪れるべきだ」とおっしゃっており、非常に印象的でした。